発音記号を学ぶ前に
今までの学習・指導の経験から、発音記号についての私見を残しておきます。最近は発音に関する書籍が多い傾向があります。ひところは解釈一辺倒ですごく持ち上げられていましたが、「話せない」「通じない」という意見に対応する形で書籍界隈でもようやく対抗するトレンドが現れたのだと思います。若い頃は僕自身も発音記号を軽視していました。当時の解釈偏重のトレンドのせいもありますが、発音記号にはほとんど名前がないし、見慣れない記号だし、模範の発音もよくわからないしで、抵抗がありました。そんな中、英語トレーナー時代に先輩から教わることができたのも幸運でした。
殆どの日本人英語学習者にとって、発音記号の学習はした方が良いと僕は考えますが、例外もあります。例えば子どもの頃から英語の発音に既に親しんでいたり、英語圏での生活経験があって十分ネイティブ発音に慣れている場合は除きます。それでは見ていきましょう。
①一番頻度の多いものは?
発音記号に関して、その存在は皆さんは認めるところだと思います。しかも一つだけでなく複数あるところまでは納得いただけるかと思います。ではそれらを習得していくに最も効率的なのは…
登場頻度の多いものから潰していく
が妥当です。そしてその正体は…
母音の「ə」
です。
…はい、分かります。頭の中が「?」となりますよね。”e”なら良いのに、その”e”がひっくり返ってるので、なんかイヤ〜な気分になるものです。なんじゃこれは?となります。
ところがこの「ə」、登場頻度が非常に高いです。まずはこの記号と仲良くなることで、英語の半分くらいの発音は見通しが立つようになります。早い話、めっちゃオトクです。
②母音の「ə」と仲良くなろう
というわけで、「ə」と仲良くなるのが第一歩です。
そしてこの「ə」には名前がついており、「シュワ」と呼ばれています。このシュワを攻略するのが英語の発音の最大のカベだと思われます。気軽に「シュワちゃん」「シュワ氏」などと呼んでも良いと思います。なにせ頻繁に登場しますので、不安がらなくても自然と仲良くなれます。
③単語でシュワを見ていこう
それでは、簡単な英単語でシュワがどのように出現するかを見ていきましょう。青文字で表した箇所がシュワになります。
- about(単語の頭にシュワ)
- today(単語の中にシュワ)
- idea(単語の末にシュワ)
いずれもおなじみの単語たちですが、こうしてみるとシュワはどこにでも潜んでいる気がしますね。
では一体、そのシュワの発音は何なのか?どう発音するのか?
次の項目で見ていきましょう。
④シュワの発音
いよいよシュワの発音です。それは…
「ぁ」
…え?もう一度?
「ぅ」
ん?なんて?
「ぇ」
うーん…もうイイです…
となるかと思います。そうです、シュワはうまく聞き取れないんですよね。
なので言い換えると
シュワは、カタカナで特定できるほどハッキリ発音してはダメということです。
場合によっては「あ」に聞こえたり「い」に聞こえたり「う」に聞こえたりと、いい加減なものです。
いやいや、一番頻度が多いクセにそんな曖昧な発音って、めっちゃ困ります!というのが普通の感覚だと思います。
基本的に英語の発音はカタカナで代用するのが困難です。特にシュワは無理、というかカタカナ表記してはダメだと僕は考えます。なのでここは切り口を変えて、シュワの存在意義を理解していくことから始めましょう。
⑤シュワの存在意義
シュワを音から探るのは諦めます。その代わりシュワの存在意義から探りましょう。実はシュワの存在を影で支える有名な立役者がいます。それがアクセントです。これは聞いたことある方も多いと思います。英単語ではアクセントのある位置を強く発音する、という目印として活躍します。英単語が長くなると第二アクセントまでありものも出てきます。
ここで、先ほど紹介した基本単語のアクセントの位置を赤色にして、もう一度見てみましょう。
- about
- today
- idea
シュワである青とアクセントの赤が見事に分かれましたね。
じつはこれがポイントなのです。
つまり、シュワの位置とアクセントの位置は一致しない、ということです。
それぞれ必ず別の位置になります。
英単語を辞書で引くことは今までにあったかと思います。これからは単語を調べる際にはぜひ、アクセントの位置も確認して欲しいです。
何故かって?
なぜなら、アクセントの音と位置を確認したら、他の母音は大体シュワである
という専門家からするとだいぶ暴論ではありますが、初学者はまずはこう思っていても大丈夫です。まずは英語の発音の世界の全体像を把握することが大切なので、違うものはその後少しづつ修正していけば大丈夫です。
まとめると、シュワとアクセントはそれぞれの存在を支え合うものであり、表裏一体なものだということです。したがって、あいまい発音であるシュワとアクセントの発音とのコントラストを明確にするために、アクセントの位置は間違えないよう明瞭に発音することが大切になってきます。
シュワとアクセントはそれぞれが補完し合うような関係性なので、シュワを学ぶこととアクセントを学ぶことは本質的に同じです。ですのでここでようやく、アクセントの発音が大切、という結論にたどり着きます。
繰り返しますが、最も登場頻度の高いシュワを活かすために、アクセントが命だということをしっかり飲み込んで頂ければとおもいます。ちなみに、子音その性格上アクセントになれません。
⑥一旦まとめ
ここまできてようやくアクセントの重要性がご理解いただけたかと思います。ここでもう一度流れを再確認しましょう。
- 英語の発音記号を効率的に学ぶぞ!
- 最も頻度の高い発音記号は何かな?
- そうか、シュワっていうのか。どんな音?
- うーむ、聞いてもようわからない、諦めよかな
- え、よくわからなくてもよいの?
- ん?アクセント?はなんか聞いたことあるけど、なんでその話?
- シュワとアクセントの位置は一致しないのね、それで?
- うんまあ、確かにアクセントはハッキリ発音するものよね、シュワは?
- アクセント以外の母音が大体シュワになるのね、だからあいまいな発音になるのかな
- じゃあアクセントの位置や発音は間違えたらダメか、シュワと勘違いさせないように
- 頻度の高いシュワから勉強してラクしようとしたけど、アクセントがキーになるとは!
というわけで、今後はアクセントになる発音を詳しく見ていきましょう。
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